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「どなたですの?
ルートお嬢様は、今お召し替えを……まぁ!」
侍女のひとりが扉に向かって呼びかけながら、部屋の向こう側にいる人物を確認すると
驚きの声をあげた。
「俺の妻になるひとだ。
少しくらい、構うまい」
そう言って、困りますと言う侍女の静止もきかずに
図々しく部屋に入ってきたその人物は、まさにサラの悩みの種そのものだった。
「お早う。
どうだ、白組のベッドの眠り心地は?
よく眠れただろう」
「ちっとも」
ラズロの挨拶にも、サラは
ぶっきらぼうに答える。
眠ろうとは、していたのだ。
しかし、彼女がようやくウトウトしかけても
なぜか、そのたびにハッと覚醒する。
眠りたいのに、もうひとつの意識が、眠るのを許してくれないみたいな感覚だった。
だから余計に、苛々する。
(2日目にして、既にこの状態か……。
つくづく、人間が小さいな、私は)
そう反省してはみるが、それで苛立ちが収まれば苦労はしない。
「そんなに警戒するなよ。
俺は敵じゃない。
もっと楽に生きろよ、お前」
ラズロが言った。
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