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もうひとつの野太い声の持ち主も、その発言に賛同した。
「なるほど、それはいい考えだ。
……サラ、お前は強すぎる。
だが今はまだ、自分の身を守る術を知らん。
奴らの報復から逃れるため。
……そして将来
この組を背負って立つ存在になるためにも。
サラ、お前にはこれから
男として生きてもらうぞ」
(あぁ、私は男になるのね)
少女は不思議に冷静な気持ちで、その言葉を受け止めていた。
他に生きる道など、ない……。
こうして、「ルイナス」という名の少年になった娘は
城の奥深くに匿われた。
「あの組は、最強の切り札を隠しているらしい」
という噂が国中で囁き交わされたが、いつしかそんな話も風化した。
そして、国内で起こる度重なる紛争は終わる気配のないまま
月日だけが虚しく過ぎていった。
止まっていたサラの時間が再び動き出したのは、
それから10年後……。
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