3/3
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
もうひとつの野太い声の持ち主も、その発言に賛同した。 「なるほど、それはいい考えだ。 ……サラ、お前は強すぎる。 だが今はまだ、自分の身を守る術を知らん。 奴らの報復から逃れるため。 ……そして将来 この組を背負って立つ存在になるためにも。 サラ、お前にはこれから 男として生きてもらうぞ」 (あぁ、私は男になるのね) 少女は不思議に冷静な気持ちで、その言葉を受け止めていた。 他に生きる道など、ない……。 こうして、「ルイナス」という名の少年になった娘は 城の奥深くに匿われた。 「あの組は、最強の切り札を隠しているらしい」 という噂が国中で囁き交わされたが、いつしかそんな話も風化した。 そして、国内で起こる度重なる紛争は終わる気配のないまま 月日だけが虚しく過ぎていった。 止まっていたサラの時間が再び動き出したのは、 それから10年後……。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!