飲み込まれていく

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飲み込まれていく

カチカチ…カチッ……… 《もう別れよ。》   ブブブ……… 《なんで?》   カチカチカチ…………… 《私、俊と付き合ってく自信ないよ。》   ブブブ……… 《自信ってなんなんだよ!》   カチカチカチ……カチッ 《とにかく別れたいの。ごめん。》   ブブブ……… 《カオリがそんなに言うなら・・・。》   カチカチ………………… 《ホントごめん。バイバイ》   パチンッ ひとつの恋が終わった。   美容院のソファに腰掛けてメールを打っている女子高生がいる。 それが私、佐藤佳緒里。高校2年生だ。 たった今、2ヵ月半交際していた彼氏と別れたばかりだ。 「ベリーショートでお願いします。」 私は笑顔で美容師に言った。     「もう来ないから。」   「やっぱり彼氏のほうが好き?」   「まぁ……そんな感じ。」   「二股でもいいし、別れろなんて言わないから。」   「ごめんね。もう決めたことだし。バイバイ。」   これが私の2週間前の行動。 ようするに二股をしていた。 私の彼氏は同じクラスの『俊』(16歳)。浮気相手はバイト先の先輩『拓也』(21歳)。 俊への愛は正直なところ2ヵ月で消滅した。 拓也への愛はあったかさえ覚えていない。 だいたい拓也とは付き合っていた認識がない。 私は夏休みの1ヵ月ほど拓也の家に入り浸っていた。 そこで体の関係を求められたりしたが、結局最後まではしたくなかった。 私は処女だったから。 この2人は被害者だったのかもしれない。 俊と付き合う1ヵ月前。私は出会ってしまった。 一目見たとき、好きになった。 外見で一目惚れしたのではない。 心が吸い取られる感じがした。 その場で私にはこの人しかいないとさえ感じた。   つまり運命の人。
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