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「いやいやいや、おかしいでしょ。魔王落とすとかさ。突き落とすの間違えなんじゃないの! まあ、私にはそんなの無理だけど」
まだあどけなさが残る、目元がぱっちりとした少女はそう言う。
少女の名は、ルル。
ルルは田舎の村に生まれた村娘。
何処にでもいる至って平凡な娘だ。
そう昨日までは――――
「お前しかいないのじゃ」
ルルの目の前の老人は長く伸びきった髭をもそもそと動かす。
老人はこの村一番の大長老でルルの曾お爺さん。皆からは、おじぃと呼ばれている。
グァリヴァル、という立派な名前があるにも関わらず本人は、
『ワシは、おじぃじゃ! そんな洒落た名は知らん!! おじぃと呼んでくれなきゃ嫌じゃぁああああああ』
と、断固として否定し懇願するのだ。
なので皆はおじぃと呼ばざるを得ないでいる。
対する曾孫のルルは何とも身勝手なおじぃの言葉に驚きの表情を表し、目を見開く。
冗談じゃないないわ!
――バンッ!
「なんでよっ! てか勇者は? 勇者が魔王倒せばいいじゃん!!」
先程まで頬杖をついていた手はテーブルに張りつき自分には何も関係ないと人事のように組んでいた足は素早く解かれ、荒々しい声を上げる。
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