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「失礼します」
声と共に人影が現れる。部屋のドアを開けた訳ではなく――この部屋にドアなど無いのだが――どこからともなく現れたのだ。顔は……分からない。部屋が暗い上にフードを頭まですっぽり被っているからだ。声から男という事だけは分かった。
「ん、おお、どうしたのだ?」
部屋の奥から威厳のある声が聞こえる。が、こちらも部屋が暗いせいで、顔どころか姿すら見えない。男の登場に少し驚いているようだ。
「はっ。先程、例の者の居場所を突き止めました。現在、暗殺隊の一人を向かわせております」
「そうか……。して、どこにいたのだ?」
「西の都、レイモンでございます」
「レイモン……か。あそこには確か……」
「はい、白虎の祠があります」
「ふむ、そうだったな。よし、なにかまた新しい情報が入り次第我に報告せよ」
「はっ。では、失礼します」
そう言うと男は入って来た時と同じ様にこの部屋から出て行った。部屋には静粛が満ちた。
「ついに、ついに突き止めた。さあ、我の邪魔をする前に消えてもらうぞ」
男は一度言葉を溜め、言った。
「神の……神の力、『光』の属性を得し者よ!」
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