第一章 リリ 超受け身の女

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駅に着くと 俺は改札口まで走った… リリはうつむいて立っていた… 俺を見つけたリリの瞳から涙がこぼれた… 俺はそんなリリにどう声を掛ければいいか解らず… 黙って肩を抱いた… そのまま何も言わず 家まで連れて帰った… 家の両親は何も言わず… 俺とリリを二人だけにしてくれた… リリは泣いていた… しばらくの間 俺は黙ってリリを見ていた… リリはかなりやつれていた… リリが落ち着きを取り戻すのを待って 俺は話掛けた… リリがポツリポツリと語り出す 俺と別れてから見合い結婚したこと… その相手との夫婦生活が 初めから上手くいっていないこと… 今回は夫に我慢が出来ず 衝動的に家出したこと… 家出したものの 行く宛も無く、俺のもとに来たこと… そして、俺との別れを後悔していること… 俺は心の中で泣いた… 今更どうしろと言うのか… 俺はリリを待っていたのに… 何年も何年も… 俺が大学時代に口説いた女は唯一リリだけだった… それだけ惚れた女だったのに… 何故俺を待たせたんだ? 訳が解らない… でも、それがリリだった… 超受け身の女… 自発的には何も出来ない女 ようやくの自発的行動が今回の家出… しかもそれが 結婚間近の俺の前に現れることだとは… どうせ家出をするならリリの結婚前にすれば全てが上手くいったやろうに…
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