『オカリナと私』

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浜辺でオカリナを吹く。 どんな曲でもない、そのときの心持ちで音色も何もかも決まる。 使い古された群青のオカリナ。 君に出会ったのはある雪の日。 浜辺に転がるオカリナの、風によって奏でられるその音に私は気づいた。 少し砂で薄汚れた綺麗な群青のオカリナ。 一番太い穴に差し込まれたビニールに包まれた白い紙。 『誰かに吹かれて何時までも音を奏でて欲しいと願う。光紅』 私の知らない人のオカリナ。 手で砂を払い口にくわえると、少し塩でしょっぱかった。 私は家に持ち帰り、綺麗に洗って乾かして。 それから私は吹いてみた。 それはそれは綺麗な音色だった。 あれから4年の年月が経って。 私は毎日、このオカリナを拾った浜辺で音をたてる。 何時までも胸に残る音を。 空に昇るオカリナの音色は。 オカリナの色と同じように群青だった。 私とオカリナと輝く海と空。 全てが群青の私とオカリナの世界。 オカリナを拾った時の私に届け。 この二度とない私だけのオカリナの唄。  
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