プロローグ

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「た、助けてくれ!?」  グランドシティ第三地区。夜のことだった。  尻餅をつき、情けなく声を荒げている中年男性は助けを求めた。レンガの壁に凭れ掛かり、目線は斜め上を向いている。  男性の目の前には、まだ幼さが顔に残る青年がいた。青年は中年男性を刺す様な冷たい瞳で見下ろす。そこに一切の感情はないように見え、中年男性は顔を更に恐怖で歪めた。レンガの冷たい感触が、青年の冷たい瞳と相まって恐怖を加速させる。  そして青年は表情を崩さず、ゆっくりと口を開く。言い聞かせるように。相手が聞き逃さないように。 「依頼通り、アンタを処理する」 「お、俺がな……何をしたって言うんだ!!」  中年男性の声は叫びと言ってもいいほどの声量だったが、周りに人影はなく、その声は気付かれる事はなかった。  虚しく自身の声が響き、中年男性はせめてもの抵抗として青年を睨む。  青年は目を細め中年男性を見つめる。そこで、中年男性は異変に気付いた。  あ、赤い……?  青年の服装は、黒が圧倒的に多かった。具体的に説明すれば、黒いコンバットブーツに同じ色のカーゴパンツ。そしてロングコート。おまけに髪も黒だ。そんな黒い青年の異変。 「お前……何だ……?」  これから何をされるのかも忘れ無意識に呟く。  中年男性が見たのは、瞳が微かに赤く光を放っている青年の姿だった。
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