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依頼を終えた青年は第三地区を歩いていた。レンガばかりのこの街は、周りの景色があまり変化しない。道もレンガで造られてるし、建物もレンガ造りだ。自分の位置を正確に把握していなければたちまち迷ってしまう。
青年の息は乱れてない。表情にも変化は見られない。彼にとって、こういう仕事は日常茶飯事らしい。
やがて青年はとある一軒家の前で足を止める。そこが青年の自宅なのだ。特筆する所は見当たらない、普通の一軒家だった。
「シェイヴ? おかえりなさい」
玄関を開けようとした所で、先に中から扉が開かれる。中から出てきた女性は綺麗な長い銀色の髪を腰まで垂らし、淡いパープルの瞳で青年を見つめた。
「あぁ、た……ただいま……」
少し抵抗があったのか、少年は最後の方で声を小さくしてしまった。それもそのはず。そもそも、この一軒家は少年の家ではない。目の前に居る彼女の自宅なのだ。
そう、メリアの家にシェイヴは住んでいるのである。
ふふん、と鼻を鳴らし胸を張った彼女は微笑んだ。その笑顔にシェイヴは少し顔を歪ませる。何故なら彼女、メリアの服装はもう昼食時と言うのに、寝巻きだったのだ。木綿素材の。
「どうかしたの?」
「いや。別に」
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