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そう広くはない店内は、どこにいても店の中が一望出来るため、 莉子にはふわりとした青年の笑顔に、客の視線が一斉に集まるのがハッキリと見えた。 「早瀬さ~ん!お願い、大至急~近江さんスペシャルアイスティーちょうだいっっ!」 そんな視線に慣れっこの莉子は、 挨拶も返事もすっとばして、自分の欲しい物を伝えた。 喉が渇きすぎて、それどころじゃなかったからだ。 「はいはい、 近江特製アイスティーね」 しかし早瀬は、咎める風でもなく、笑顔でキッチンに消えた。 いつもの事だと気にも留めないのだろう。 店内にはメロディーだけの、 どこかで耳にした事のあるようなジャズが流れている。 莉子はお気に入りの窓際のテーブルに腰を下ろした。 見渡すと莉子の他にいる客は、 大学生っぽい女の子二人連れと、 有閑マダムと称されそうな50代くらいの女性が一人、 近所にある女子高の制服を着た四人グループが一組。 いつもの事だが、見事に女ばかりだ。 .
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