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「バカヤロウ、なれるに決まってんじゃねぇか! 魔法が使えなくたって、世界が救えなくたってなあ、愛する人を守りたい、幸せにしたいっていう強ぇ思いがあれば、みんなヒーローになれんだよっ! おまえはいねーのか! そういう女っ」
父が持っていたビールジョッキを、ばん! とテーブルに置いた。半分ほど残った黄色い液体がジョッキの中で揺れる。
まだ小学一年生の俺にそんなふうに聞いてくる父も変な人だけど、俺はその気合いに圧倒されて、迷う暇もなく即答していた。
「いるっ!」
途端に父はにやっと口角を吊り上げる。
熱い瞳に引っ張られるように、俺はその決意を口にしていた。
「僕――俺っ」
初めて自分を『俺』と呼んだのも、確かこの時だ。
「俺、ひかるちゃんを守るヒーローになる!!」
小一の春。
強く拳を握りしめて、茹でタコみたいな色をした父の顔目掛けて、大好きな彼女の名前を叫んでいた。
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