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研究室の奴らと学食でだらだら話しこみ、帰宅すると偶然、彼女に会った。
アパートの階段の途中で声をかけると、もう20分も待たされているから、寒いのでコンビニに行くと言う。
今日はホワイトデーだ。
何やってんだあいつ。
「詩織ちゃん、ちょっと待って」
電話……彼女からもしてるだろうけど、一応、と思ってかけてみる。
わりとすぐに、礼央は出た。
「あ、隼斗?会ったか?あ~良かった」
ガタンガタン、
どこにいるのやら……電話の向こうはなんだかバタバタしていた。
「今、千鶴と会ってるんだ」
………は?
なんだって?
彼女との約束ブッちぎって他の女と会ってるってか。
「わかった。じゃあ、部屋にあげておくから、急げよ」
胸に込み上げる怒りと苛立ちを精一杯抑えながら、俺はそう言った。
「詩織ちゃん、おいで」
何が起こったのかわからず、目をクリクリさせている彼女を誘導し、
招き入れた部屋……そこは、
無念、俺の部屋ではなく、礼央の部屋だった。
俺は、奴の部屋の合い鍵を持っていたのだ。
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