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母親の退院を見届け、秋田の実家から仙台のアパートへ戻った時、
天使が、そこにいた。
小柄な友人と共に、俺の隣の部屋のドアが開くのを待っている様子だった。
一緒にいた子がかなり小柄な人だったために、階段を上がるとすぐに
彼女の顔がよく見えた。
少し茶色くてゆるいウェーブがかかった長い髪。白い肌に長い睫毛。華奢な身体つき……。
自分の部屋は一番奥なので、どうしても彼女たちの前を通らなければならない。
「うしろ、すみません」
そう声をかけてチラ見もせずに通過した。
彼女の連れにガン見された……という、気配を感じた。
自分の部屋に入ると、すぐに隣の部屋のドアが開き、真二郎の声が聞こえてきた。
……四人で楽しい飲み会か。うるさくしないでくれればいいが……。
そっと、壁に耳をつけた。
隣人の礼央は、しょっちゅう部屋に女を連れ込んでいるけれど、
今までこんなに、気にしたことはなかった。
このアパートは壁が薄い。少し聞き耳立てれば丸聞こえだ。
『……り?こっち?』
『はやとだ!あいつかえって……』
……なんか、俺の話になってる。
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