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四月。
新入生が入って大学は活気づき、俺達は三年になった。
礼央の部屋は日々賑わっていた。
礼央の彼女……詩織ちゃんは短大を卒業し、地元の福島に戻ったらしい。
礼央の奴、彼女がいるくせに、昨夜も女を連れこんで……。
ガチャガチャッ。
朝、玄関へ行くと、隣からドアノブを廻す音がした。登校のタイミングが被ってしまったようだ。
礼央の部屋からは女が出て来た。千鶴だった。
「おはよう」
と、声をかけられた。礼央のバイト先の居酒屋で何度か会ったことがある。その女は礼央のバイト仲間だった。
軽い会釈だけ、した。
……こいつだったのか。いつも近所迷惑考えなしに、大きな喘ぎ声出す女は。
他の女はたいてい、ためらいがちというか、遠慮がちな声なのに。
一人だけ、我慢とか抑制の利かない女がいるんだな……と思っていた。
よりによって、そいつが一番頻繁に出入りしているもんだから……。
タチが悪い。
いい加減、落ち着いたらどうなんだ。
と、近々礼央に言ってやろう。
そう心に決めていた矢先のことだった。
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