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シャワーを浴び、ビールを飲んでいた時に
突然彼女は、やってきた。
俺はあの時の彼女の姿が、ずっと忘れられない。
思いつめたような表情をして、手には鍋と炊飯器を持っていた。
「どうしたの?ご飯持参の家出?」
にこやかにそう声をかけてやると、
「ごめん、あがらせて……」
と、今にも泣きそうな顔で彼女は言った。
断る理由は、ない。
俺は彼女を部屋に招き入れた。
礼央の奴、何かボロを出したんだな……。
完璧に隠せないなら、浮気なんかしなきゃいいのに。ほんとにバカな奴だ。
あんな奴やめろよ。君の手に負えるような男じゃない。
君に相応しいのは……。
相応しいのは……
『はやとー!マイのこと忘れてない?』
蘇る舞子の声。
ああ、忘れてない。もちろん忘れてないよ。
とにかく、詩織ちゃんは礼央とは別れたほうがいいんだ。
それだけははっきりしている。
だからそれを、伝えようとした。
そうしたら。
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