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「ちづるって誰……?」
俺は言葉を失った。
女の存在に気づいたのだろうとは思ったが、
まさか実名が出てくるとは。
礼央はいったい、どんなヘマをしたんだ?何を言ったんだ……?
「知らないけど……」
俺は嘘をついた。
もしもそこで、その女は、礼央となかなか別れない女で、昨日の夜も部屋で……なんて話をしたら、
彼女はどれだけ悲しむだろう。
傷つくだろう。
そう考えると、何も言えなかった。
やがてぽろぽろと涙を零し始めた彼女を、
そっと包むように抱いた。
「ごめんね、ごめんね」
と恐縮する彼女に、
「いいよ、たくさん泣いて。我慢しないほうがいい」
そう、声をかけた。
すると彼女は、堰を切ったように泣き出して、
やがてすやすやと寝息をたてて眠り込んでしまった。
疲れてるんだな……。
ったく俺はいったい何をやってるんだ!?
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