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ドアを乱暴に蹴ると、礼央がばたばたとやって来て彼女の顔を覗き込んだ。
「詩織、酔っ払ったのか?」
「違うよ。疲れてるんだろ……就職したばっかりで……」
ぐったりしている彼女をベッドへ横たわらせた。
壁の向こうは自分の部屋。
なんだか変な気分だ。
「礼央、お前遊びたいなら、遊ぶだけにしろ。本命作るな」
「……」
「両方傷付けることになる」
「……」
何も言わない。
そうだよな。何も言えねぇよな。彼女のこんな顔見たら。
泣き腫らした彼女の姿は、礼央の目にどう映っているものか。
「隼斗……何もしてねぇよな」
「は?」
「俺、お前だから、迎えに行かなかった。信用してるから」
「……いらねぇ、それ」
捨てゼリフを吐いて出て来た。外気に当たるのは一瞬。
なんで、こんなに近いんだ。
この近さは酷だ。
部屋に入ると、壁に飾った舞子の絵が俺に訴えかける。
「はやと~っ、マイのこと……」
はいはい。忘れてない。
忘れていないよ……。
。
。
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