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あからさまに面倒くさげな表情をする礼央に
「彼女、ちょっと貸して」
と言うと、
「詩織を貸す?」
思い切り眉をしかめた異様な顔付きに変わった。
「もうすぐ舞子の誕生日なんだ。プレゼント、悩んでて、それで……」
すると一変、アハハッと礼央は笑った。
「なんだよ、そんなことかよ。いいよいいよ、詩織はセンスいいから、いいもん選んでもらえるだろ」
「そうか。
ありがとう。助かるよ。じゃあ、行ってくる」
よろしくなー、と声だけで見送られ、店を出た俺はすぐさまダッシュした。
早く早く、彼女が待つ店へ一刻も早く……と。
休日の大通り、人波を掻き分け、すり抜けてその店へ一心不乱に向かって行く。
するとその途中、
「藤谷っ!」
誰かの声がした。
横断歩道の途中で足を止め、辺りを見渡してみる。
荒い息を整えながら、ゆっくり横断歩道を渡りきったところで、
「やっぱり、藤谷だ」
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