涙の雫

4/12
前へ
/344ページ
次へ
もう一度、その声がして振り返ると……。 ……ああ、この人か。 「庄司さん。先日はお世話になりました」 先週会社訪問してお世話になった、先輩だった。 「いや、いいんだよ。就活関係なくまた遊びに来いよ。社長もお前のこと気に入ったらしいし」 「マジっすか!?」 「良かったな、たまたま会えて。なかなかいないぞ、会社訪問の時に会える奴なんて」 「ありがとうございます!!」 そこは、俺の第一希望の建設会社だった。 「藤谷、私服だと雰囲気違うから、ちょっと自信なかったよ」 「雰囲気違うって、それは……」 色黒で、会社訪問の時に後ろで束ねていた少し長めの髪は、緩いパーマがかかっていた。そしてスーツにサングラス……。 「怪しいッスよ、庄司さん。最初誰かと思いました」 「ははは、よく言われる。いいんだよ、営業じゃないから」 立ち話で大幅な時間ロス……。しかし今後世話になるかもしれない先輩だ。無視はできない。 庄司さんと別れて、再び俺はダッシュした。 彼女が待つ店へ……。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加