涙の雫

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約束の店に、彼女はいた。店の外から姿を伺うことが出来たので、少し様子を見ていた。 本を読んでいた。 その表情は、穏やかだ。 かなり遅刻されているのに……。 どうやら彼女は、待ち慣れているようだな。 本がおもしろいのか、 礼央に会えるのが嬉しいのか、 その表情は、微笑んでいるようにも見えた。 「お待たせ」 と声をかけると、 「えっあっはい。……なんでっ!?」 返事をしながら驚いている。そりゃあそうだよな。 礼央が来れない事情を説明した。 礼央が来なくてがっかりしたかな……? ……そうでもなさそうだ。 「パチンコ~?」 と呆れたように笑っている。 笑っている……。 良かった……。 「じゃあ、行こうか」 「あっ、う、うん」 特に行く先も告げず、店を出た。
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