涙の雫

7/12
前へ
/344ページ
次へ
「詩織ちゃんはもう少し太った方がいい位だよ」 そう言うと、なんだか安心したような穏やかな表情に変わる。 まるで百面相だ。 笑顔、泣き顔、悔しそうな顔、照れた顔、怒った顔、そして、 とても悲しそうな顔……。 いろんな顔を見てきた。 彼女と過ごした時間はまだ微々たるものなのに、実に濃かった気がしてならない。 とても、惹かれ始めている。 それを自覚した瞬間だった。 「あ、ここ……」 とあるデパート内のジュエリーショップに入った。 俺は、舞子へのプレゼントを買わなくてはいけなかったのだ。 舞子には申し訳ないが、思わず、ため息が出そうになってしまった。 「え?ここ?」 驚いて当然だよな。 「そう、ちょっと付き合ってもらえる?もうすぐ誕生日なんだ……。 彼女の」 「彼女……。そ、それは彼女さんと一緒に選ぶのが一番よろしいかと……」 「今、日本にいないから」 「えっ」 「オーストラリアに留学してる」
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

454人が本棚に入れています
本棚に追加