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「詩織ちゃんはもう少し太った方がいい位だよ」
そう言うと、なんだか安心したような穏やかな表情に変わる。
まるで百面相だ。
笑顔、泣き顔、悔しそうな顔、照れた顔、怒った顔、そして、
とても悲しそうな顔……。
いろんな顔を見てきた。
彼女と過ごした時間はまだ微々たるものなのに、実に濃かった気がしてならない。
とても、惹かれ始めている。
それを自覚した瞬間だった。
「あ、ここ……」
とあるデパート内のジュエリーショップに入った。
俺は、舞子へのプレゼントを買わなくてはいけなかったのだ。
舞子には申し訳ないが、思わず、ため息が出そうになってしまった。
「え?ここ?」
驚いて当然だよな。
「そう、ちょっと付き合ってもらえる?もうすぐ誕生日なんだ……。
彼女の」
「彼女……。そ、それは彼女さんと一緒に選ぶのが一番よろしいかと……」
「今、日本にいないから」
「えっ」
「オーストラリアに留学してる」
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