涙の雫

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「はい、これ」 と指輪が入った小箱を渡してしまった。 「えっ。これって……、さっきの指輪?」 「そうだよ。プレゼント」 「彼女にじゃないの?」 「違うよ」 「いいよ。もらう理由がない」 「今日付き合ってくれた御礼」 「ダメだよ。そんなの高すぎるし、彼女でもない女にそう簡単に指輪なんてあげちゃダメ!飴玉あげるのとはわけが違うのよ……!」 「でも、欲しそうだったし」 ここでひと呼吸、置いた。 「泣きそうだったから……」 俺がそう言うと、彼女は黙り込んでしまった。 その大きな瞳からは、今にも大粒の涙がこぼれ落ちそうになっているんだ。 泣かないでくれよ、もう。 俺の隣で、あいつを想って泣かないでくれよ。 君の涙の雫なら、もうその手元にあるじゃないか。 それ以上泣かされながら付き合うことに何の意味があるっていうんだ? 君は幸せなのか?
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