涙の雫

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「わかった。じゃあ……これは今日の御礼ってことで、いただくね。ありがとう」 複雑そうな表情を浮かべている。 なぜ? 欲しかったんだろ? 欲しいものが手に入ったのに嬉しくないのか? それとも。 俺からのプレゼントでは、迷惑なのか……? 迷惑、か……。 礼央からじゃないと……。 ダメなのか……? ほんの少しでも 喜んでほしいのに。 この思いは伝わらないのだろうか。 このときの俺は、彼女の想いを気遣う余裕など、まるでなかった。 子供だったんだ。 お互いに……。 この時どちらかにもうひと声、自分の素直な気持ちを打ち明ける勇気があったなら、 俺達の人生は変わっていたのかもしれない。 まったく、まったく別なものに。
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