1.山浦 和美

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 最近外に出なくなったのもあいつのせいだ。でもあいつは世間体を気にしている。それはあいつを守る為の嘘なんだろう。 『いやぁ、うちの妻は出無精でね。家事とかはやってくれるんだけど買い物とかは俺がやってるんですよ』  近所のオバサンらにそう言ってるのを聞いたことがある。  何が出無精だっ!  アタシは友達と買い物行ったりしたいんだよ。でも絶えず痣のある顔でどうやって外に出ればいいのよ……。 「誰でもいい、アタシの話を聞いて――」  そんな風に独り言を言ってアタシは携帯を手にした。最近始めた“出会い系サイト”。ここにアタシと同じように男に苦しめられてる女性はいないか探してる。  いろいろページを飛んで、ある一人の紹介文に惹かれた。 【二十六歳の主婦です。私はもう一年もストーカーに悩まされています。同じような悩みを持っている方、いませんか? 女性の方のみ友達になってくださるを希望します】 ――――居たっ。  アタシはすぐに書き込みをした。ネカマかとも思ったけど、でも何か感じるのよね。同じ雰囲気。 【二十九歳の主婦です。今、夫からの暴力にひたすら怯えて暮らしてます。良かったらお互いに相談しあいませんか?】 「これで返事がくるのを待てばいいわけね……」
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