プロローグ

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「では…新入生の皆さんのこれからの三年間が有意義なものとなるよう生徒一同祈っております。分からないことや困ったことがあった時は先輩方に頼って下さいね、以上です。」 生徒会長代理の演説に満足そうな校長を筆頭に、盛大な拍手が沸き起こる。 内容の殆どを聞いていなかったけれど、一応俺も手を叩いておく。反響するクラップ音が鼓膜を破いてしまいそうな程で、うるさい。 代理は一礼をして壇上から降りていった。 フゥーっと、あちこちから溜息を吐く音が聞こえる。 まったく…楽しみのない学校になんて来る意味ないじゃないか!と、俺の口からも盛大な溜息が漏れる。 なんの為にわざわざこの学校を選んだのか分からなくなるじゃないか。 何故、俺がこの学校を選んだのか。それは世間でまことしやかに囁かれている噂にあった。 男子校そして全寮制という閉鎖された空間だからこそ起こる、オスがオスを追いかけるようになるという現象。 同性愛が盛んな学校だという話を聞いた。 それだけじゃない。ここの生徒会長は女癖ならぬ、男癖が悪いということで有名なのだ。 そこに俺が生徒会長に執着する理由がある。生活が潤う、と。 たったその二つの噂だけで俺の進路は決定した。若干偏差値が高かったため、受験勉強を頑張ったことはまだ記憶に新しい。 だからこそ生徒会長がいなくては俺の学校生活はお話にならない。なんのために此処に来たのか分からないっていう最初に繋がる。 ……単純な進路志望理由だと、自分でも思うけど。将来なりたいものもやりたいことも考えてなかったから、別に何処でもいいやという甘い考えもあった。 まぁ、人生は何時なにが起こるか分からないし、欲望には忠実に生きないと!これ、オレ流論。 とりあえず次を狙うなら生徒総会か?今度はその姿を拝めるだろうかという思いが頭の中に浮かぶ。 まっ、その時になってみないと分からないか。 よくある話だと生徒会メンバーそれぞれにファンクラブとかがあるのが常だし、そういうのを探して当たってみるのもまた面白いかもしれない。 生徒会長を見るまでの繋ぎにと自分を奮い立たせてみる。 そういえば、と辺りを見回してみると誰もいなかった。 長々と過去回想に思案にと耽っている間に皆退場していたようだ。 どうりで静かなわけだ。声の一つくらい掛けてくれてもいいのに。 誰に向けるでもない憤りを今自分が座っている椅子に当てる。
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