第Ⅰ章-退屈な日々-

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「なぁ、蒼。彼処見てみ?」 彼処、と指さす方へ首を向けてみる。 教室のドアを越えたところ、廊下で仲睦ましそうに笑いあい肩を組む二人組がいた。当然、二人とも男だ。 「あいつら絶対デキてるよな!」 「さぁ…どうだか。」 「なんだよー冷たいなあ。」 と、俺の隣で口を尖らしながら文句を言うこいつは、俺の友達で腐男子仲間でもある前原晃毅(マエハラ コウキ)だ。 校則に則った黒色の髪、長すぎないさっぱりとした短髪。一見地味に成りがちなそれだけど、逆にハッキリとしたこいつの顔立ちをより引き立てていてよく似合ってると思う。 こいつは、俺と違ってちゃんと先の進路を見越した上でこの学校への入学を決めたという。一応ここの高校は進学校だ。 まぁ多少の期待もあったらしいけど。根は真面目な奴だ。 「だってあいつらどう見ても運動部じゃんかよ。おんなじ部の仲間同士、楽しくやってるようにしかみえないんだけど。あと俺、ゴツいの無理だし。」 「いやそれは…オレも無理だけど、さ。だってだって、少しは夢見ようぜ!折角の男子校…こんなはずじゃなかったのに…」 ハァ…と悲しげに息を吐く。 「それは俺も思う。俺も期待してたし。」 「だよなー…嗚呼つまんねぇ。蒼、つまんない。」 「いやぁ…れを俺に言われましても…」 「………じゃあ、オレたちが付き合っちゃおう」 「ムリ。俺、腐ってはいるけどノンケだから。」 「だーもうっ!真面目に返すな!つっこんでよ。」 「はいはい。てか晃毅もノンケじゃん。」 「それとこれとは話が違うの」 何が違うんだ、と心の中で突っ込む。晃毅には反応をかえすと調子に乗るので、何時もあえてクールな態度で接している。 蒼が冷たーいと、今日何度目かの決まり文句を聞き流す。 俺は由井蒼羽(ユイ アオバ)。だいぶ自己紹介が遅れてしまって悪いな。 1年の時、同性愛が盛んな学校だから、との噂を鵜呑みにし、楽しい学校生活を期待して入学した。 けど、実態はそんな同性愛に勤しんでいる人はほぼ0に近く、いても目立たないところでこっそりと密会。 てなわけで、俺の目眩く薔薇色妄想生活はまったく達成されていないのだ。 だから、仕方なしにそれっぽく見える2人組とかで我慢してたりする。 それでも1人だとあまりにもつまらないから、晃毅と連んでいる。
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