12人が本棚に入れています
本棚に追加
「………おい。」
海好は人だかりを掻き分け、中心に出るとオバサンが今まさに振り下ろそうとしていた日傘を片手で受け止めた。
「まあ!何するの!?その手を離して頂戴な!!」
「無理だな。手を離したらコイツがまた殴られんだろ?」
オバサンが取り返そうと両手で引っ張る日傘を握りしめ、ヒョイともう片方の手で解放された傷だらけの子供を抱きしめる。
「当たり前でしょ!!その子がなにをしたかわかるでしょ!!?」
「いやー…それが俺さっきまで違うとこにいたから見てないんだよね。」
「だったら………」
「だけど」
海好はオバサンの傘をパッと離した。
オバサンはよろけてしりもちをついた。
その目の前に海好の人差し指が突きつけられた。
「俺は、イイクラシをしているオバサンよりも、こっちの子供の方が可哀想に見えた。だから俺はこっちのみぃかぁた。分かる?」
「なっ…なっ……!!」
オバサンは顔を真っ赤にさせて鼻息荒く立ち上がると足音を荒げて行ってしまった。
「……ふん。さてと。」
海好は手早く子供の傷の具合をみた。
「ふんふん、軽い打撲とかすり傷かな。でも痛かったな~…ごめんな?」
「……何で、オジサンが謝るの?」
「ちょいまち…俺はまだ27だ。オジサンはダメだ、オジサンは。」
目の前で指を降ってやると、子供はキョトンとしていた。
「じゃあ…なんて?」
「そうだねぇ…おにいさんってのもなんかなあ~…?」
海好は頭をかきながらいろいろ考えて見るもどうもまとまらない。
「…名前。」
「うん?」
「名前は何ていうの?」
「俺?海好、木好海好。」
「きよし?うみよし?」
「そう、木にも好かれて海にも好かれる。最高にかっこいい名前だろう?」
「…うん!あのね、うみよしさん。」
子供は目を輝かせて俺を見た。
「“好にい”は?」
「へ?」
「あの、呼び方です。好かれるおにいさんだから好にい。」
海好は指をパチンと鳴らした。
「いいな!!よし、俺は好にいだ!よろしく。」
「よろしくお願いします。好にい。」
子供は頬を蒸気させ、嬉しそうに笑っている。
「…っと、いけねぇ!お前の名前は?」
子供はまだ火照ったまま答えた。
「ソラ。宇宙の宙で宙です。」
「そうか、宙…お前の親はもしかして…。」
「はい、地震で死にました。」
そうか、と呟くと宙はただ頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!