3001人が本棚に入れています
本棚に追加
/784ページ
で、 俺。 白地によく分からんモノクロのプリントがされたTシャツに黒のハーフ海パン。 首からはネルに貰った眉唾物の、水晶の首飾りを提げている。
Tシャツを着ている理由はもちろん──
「おーい! コウも来いよ♪」
向こうからジェイドの呼び声と皆の楽しそうな声が聞こえてきた。
あぁ皆さんお揃いで、 楽しそうでございます。 ま夏の海を存分に楽しんでいらっしゃいますね。
──で、 なぜ、 俺が、 海などに、 来ねばならんのだ!!
「うぉぉあああぁぁぁ!!」
俺は爆発的に蓄積され苛立ちから憤りへと進化した感情と共に全速力で走り込んだ。
50m強の距離を一気に駆け抜け、勢いを殺さぬままジャンプ──蹴りっ!
そのまっ赤な髪とまっ赤な海パンが暑苦しいんだ! この女好きバカ赤男が!!
「……俺は荷物の番をする」
蹴り込んでから、自分の異様なテンションの高さに気が付いた。 物の見事、 一気の内に冷め冷めて、 抑揚の無い言葉が零れ落ちる。
一足先に海に飛び込んだゲイルの胸板を心配することも無く、 俺は早々にため息を吐いた。
「そう? じゃあ頼むよ」
皆は目が点だが、さすがにジェイドは付き合いが長い。躊躇もほんの少々で、 すぐに皆を連れて海へと飛び出していった。
蹴りをくれてやったゲイルがまだ浮かんで来ないが……問題は無い。 ああ見えてゲイルは打たれ強いし、 手加減はした。
俺は海が好きではない。 なぜ、 と聞かれてもよく分からないが、 恐らく周りと俺との空気の差が原因だろう。 幼い頃に親姉兄と来た記憶が微かに残っている程度で、 今回でいったい何年ぶりの塩水かも分からない。
「で、 ツバキは行かないのか。 ウィンが待っているぞ」
そういった“差”はこちらにも見受けられるわけで、ツバキは残っていた。 あの無愛想なウィンが待っていてくれているというのに。
冷めきった調子をそのままに促してみるも、効果は全く無いようだ。 いつもながら、 掴めない。
──まぁ良い、ツバキの好きにすれば。 俺に大した害も、 関係も無いだろう。
最初のコメントを投稿しよう!