∥解放∥

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  メロン、 マンゴー、 コーラ、 ハワイアンブルー。 ハチミツなんてのもあった。 計1200S。 こういう所は足許見やがって高いものだが、 1コ分マケてくれた。 1500Sが1200S、オッサンが良い人でラッキーだな。 買うのに手間取ってしまった。 数が多くて仕方が無いとは言え、 待たせるわけにもいくまい。 俺は袋の中のかき氷をこぼさないように慎重に、 かつ足早にツバキの下へ向かった。 急がないと、 ツバキを待たせるどころか氷が溶けてしまいそうだ。 それくらい、 陽が暑い。 首筋を突き刺す太陽は全く容赦無く、 早く氷にありつきたいと俺の喉を乾かした。 が、 「うわ……」 最低だ。 20代前半くらいの男が4人、 不細工な笑みを浮かべてツバキを取り囲んでいる。 ロリコン野郎共が。 大の男が見た目12歳程度にしか見えない子供を囲んで……恥ずかしくないのか。 しかも抵抗するでも怯えるでもない無表情を相手にして楽しいのだろうか。 まぁ良い面倒臭い、無視だ。 「あいよツバキ、少し待たせたか」 そんなアホ共の間をすり抜け、ほぼ完全に停止しているニホン人に袋を手渡した。 途端に人形だった顔が輝き──とはいえ微かなことに変わりは無いが──小さく微笑んだ。 「おい、誰だぁオメェは?」 ガサゴソと袋を漁りだし──どうもハチミツがお好みのようで。 あの甘くまろやかな感じは嫌いではないが、 しつこ過ぎるところが珠にキズだ。 やはり、レモンには劣る。 「おいって」 では俺は何にしようか。ハワイアンブルーが妥当か。特徴的な冷め色が俺にピッタリだろう。 そういえば、魔術の氷はかき氷にできるのだろうか。あ、無理だ。確か他人の魔力は人体に有害だったハズ。では自分で食う分には── 「シカトこいてんじゃねぇよ! ブン殴られたいんかこの── 「おいお前。 何やってる」 いつまでも無視を決め込む俺に、 遂にA君がキレた。 しかし丁度その時、 その言葉を遮ってあのクールな声が割り込んでくる。 ロリコン共は気付いていないだろうが、 ソレは確実に俺に向けられた言葉だろう。 「誰だオメェ! どっからるらぁあ── 「あんた達には言ってない。 邪魔だ」  
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