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小口が不意に右斜め前に猟銃を構えた。
一郎さんもそっちを見る。
生唾を飲み、体が緊張して、腰が引けて、自然と後退りする。
ガサガサ。
草むらから音がする。
小口は、猟銃を握り直して、しっかりと狙いをつけた。
草むらから何かが顔を出した。
「お父さん?」
なんと一君だった。
「一!無事でよかった」
それから屋敷に帰り、一君に話しを聞くと、なんとも不思議な事を言ったのだ。
一君は、虫をおうのに夢中になり、森に入り、迷ってしまった。
森を歩いていると、今は誰も住んでいない集落に出た。
廃墟が並ぶ集落を、冒険がてらに探索していると、人がいたらしい。
人だと思って近づくと、人ではなかった。
角が生えて、赤い顔をした唐草を羽織った鬼だったと言うのだ。
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