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玄関のドアを開けて外に出た僕は、周囲に気を向ける。
理由は後述する。
今の僕ならいつもの寝ぼけ眼がキリッとしているはずだ。
今日は右の方から来る気がする。
「!」
不意に僕の左斜め前の植木から音がした。
ということは……来る!
「……うにゃあ!」
「にゃい!」
「ふぎゃっ!」
そしてバタッと倒れた。
……今の状況を説明すると……
左斜め前の植木から音がしたのは投石による情報操作。
こいつはそれが得意だと思っているが、ワンパターンすぎて僕には効かない。
絶対反対側にいるから。
わかっててやってるかもしれないけど。
というわけで、右側に意識を集中。
案の定、右斜め後ろの木陰から「うにゃあ!」と、猫のような奇声を発して飛び掛かってきた。
それを読んでいた僕は、「にゃい!」と猫のようにいいながら、顔面に軽くネコパンチ。
そしてネコパンチを受けたこいつは、「ふぎゃっ!」と猫のようにといい倒れた。
それにしても……。
なに考えてるんだろ。
毎朝これやってるんだよ。
「いつもながらこれなに?」
「……いつもながらなんだろう?」
寝転びながらこいつが答える。
僕も向こうも漫画ならクエスチョンマークが浮かんでるだろうね?
「じゃあやめて」
「でもいやだ!」
真顔で語気を強めて言われた。
どうしてそこまでこだわる?
「どうしても?」
「どうしても」
……なんで?
いちいち考えてたらめんどくさいけど。
「……学校いこっか」
「……うん」
そういって手を掴んで立たせる。
……そういえばこいつの紹介を忘れてたね。
こいつは幼なじみの金森 詩織(かなもり しおり)。
家の隣に住んでる。
一言で説明すると、まさに阿呆だ。
今までこいつの考えが読めたことがない。
会話に脈絡がないし、言ってる事もやってる事も訳がわからない。
見た目は腰まで伸びたサラッサラのストレートな黒髪。
大きく丸い目に小さめの鼻、口元はすっきりしている。
世間一般の基準で見ると普通に可愛い。
今まで女として見てなかったけど。
……訂正、見れなかったけど。
この残念な性格じゃなければモテるんじゃない?
……治らないだろうけど。
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