32人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
それは、遠い…遠い…遥か昔の隣りの国の物語…
今より二千年以上も昔の事、宋の国に『荘子』という男がいた…
ある時荘子は夢を見た。
夢の中で胡蝶となり、ひらひらと舞っていた。
心行くまで羽を広げ、天空を舞い遊んだ。
夢の中で荘子は、自分が荘子という人間である事をすっかり忘れていた。
ただ自由な胡蝶の心で、空を舞う事だけを、心の底から楽しんでいたのだ…。
しかし…ハッと目が覚めると、そこには人間である荘子がいる。
つい先程まで胡蝶であったはずなのに、今は人間の心となって…
荘子は問う…
それでは自分とは何なのか?
荘子が夢の中で胡蝶となっていたのか…或いは、ここにこうしている自分が今、胡蝶の見ている夢ではないのか…?
人間である荘子と胡蝶は、全く違う形をしたものだ。
されど夢の中で、心は同じであった…
ここにいる自分は、果たして真の自分なのか?
それとも…ただこの時に、こういう夢を見ているだけではないのか……?
最初のコメントを投稿しよう!