愛殺-アイサツ-

2/5
前へ
/24ページ
次へ
綾世京。 大手企業の営業マン、綾世巧と洋服デザイナー、綾世洋子の間に生まれる。 家は裕福で、彼女は愛を全身全霊に受けて育った。 だが、彼女はそれを何ら嬉しいとは思わなかった。 正確には“思えなかった”。 何も京とて最初から思えなかったわけではない。 家が裕福であったがゆえに、満たされ過ぎた。 何かを欲しいと言えば――買ってくれた。 何かを食べたいとねだれば――作ってくれた。 何かをやりたいと思えば――やらせてくれた。 満たされ、満たされ、満たされた。 欲求は満たされて、飽和した。もはや、綾世京は何をされても、嬉しさを、ひいては喜びを感じなくなっていった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加