2人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は聞きました。
「貴方はだあれ?」
ヒトは答えました。
「悟りきった愚者だよ」
少女は言います。
「悟りきったというならば、答えてもらおうじゃない」
悟りきった愚者は言いました。
「いいよ。これは自分の意見で見地だから、一般大衆の意見で見地じゃないからね」
少女は言いました。
「わかったわ。じゃあ、卵が先か鶏が先か」
悟りきった愚者は答えました。
「鶏」
少女は聞きました。
「何故?」
悟りきった愚者は答えました。
「生物的見地から言えば、最初の方の生物って、細菌類じゃない?まぁ、形から言えば、球形とかだから卵っぽいかもしれないけど、栄養を摂取しているだけでなくて動いているのだから、鶏」
「ふうん、じゃあ人間はどうして学ぶの?」
「暇つぶしだから」
「何故?」
「生きていくだけじゃ物足りなくて、よりおいしく食べる方法を考えた。そんな感じ」
「へぇ。
じゃあ、戦争が終わらないのはなんで?犯罪が消えないのはなんで?」
「人を踏みにじるのが好きな人間がいるから。それだけじゃないけど。それなりに生きるのに必死なんだよ」
「じゃあ人間はなんで死ぬことに恋焦がれるの」
「生きることに満足したからじゃないかな」
「貴方は?」
「生きているのに飽きた。
満足したから、飽きた。
満ち足りたから、もういらない。
そんなところかな」
「あたしもそういう風になるのかしら」
「ならない方がいいよ。こんな風なんて」
「そうかしら」
「そうだよ」
「じゃあ最後に。人間をどう思う?」
「美しいと思うよ。最低だけど。反吐が出るくらい最悪だけど。なんでこんなのに生まれてきたんだろうって思うけど。でも、美しい、と思うよ。君にも出会えてよかった」
「そうなの?変な人」
「人じゃあないよ。愚者さ」
「愚者も人じゃない」
「違うよ」
「そうなの?」
「そうだよ。希望も夢も願いもない人間なんか人間じゃないよ。ただの蝶を追っかけて崖から落ちる愚者さ」
「そうかしら」
「うん」
「ふぅん。まあいいわ。ありがと悟りきった愚者さん。冥土の土産に私の名前を教えてあげる。『病院塚闇姫』。それがあたしの名前。覚えてくれなくてもいいけど」
「こちらこそ、ありがとう。こんなくだらない話をきいてくれて」
「いいわよ。そんなの」
少女はじゃ、と言って愚者から離れた。
最初のコメントを投稿しよう!