第零章 ケガレナキオトメ~現在

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       1  瞬間、肩に染み入るような冷たいものを感じた。空を見上げると、白い天使達が静かに地上に舞い降り出している。この冬の初雪だった。  私はそんな寒空の下、ご主人様の帰りをいつもの駅前で待っていた。元々目のいい方ではないので、仕事帰りの人や若者たちで溢れかえる今ほどの時刻ともなると、人捜しには随分困ってしまうのだが、今日は街のネオンを雪が照り返し、周りの顔がよく見えた。  私は辺りを見渡してみる。……いない。  先日出掛けられたときは確かに徒歩だったので、ここを通られるはずだ。だって、そういうときの待ち合わせは決まって、奥様に見つからないようにこの場所なのだから。もっとも、気にすべき奥様はもう、この世にはいないのだが……。
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