夜明けの約束

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なんとなくそれ以上聞けない雰囲気。 私は由宇の横顔を見つめた。 毛穴も存在しないような、きめ細かい白い肌。 憂いをたたえたその顔は、とても大人びている。 「ねぇ、由宇って本当はいくつ?」 なんとなく、本当にただなんとなく聞いた。 由宇は私を見た。 心の奥深くまで覗き込んでくるような目。 ぞくりとして、思わず目を逸らす。 「18」 「え?」 本を閉じる音がして視線を戻すと、由宇は挑むような顔で私を見ていた。 「本当は18才だって言ったら、どうなの?」 「どうって……前14才だって……」 由宇が18才? 同級生? 信じられない。 「そうだね。僕のこの姿を見たら18才には見えないよね。 つまりそういう事」 意味がわからなかった。 由宇は背を向け、立ち去ろうとしている。 私は服の裾を掴んだ。 「どういうこと? なにか怒ってる?」 由宇はキョトンとした後、ぶっと吹き出す。 初めて見せた、少年らしい笑顔で。 思わずむくれると、 「ごめんごめん。藍っていい人だね。 怒ってないよ。 僕が意地悪しただけ」 「ふーーーーん。そう。で? いくつ?」 「さぁね。藍が山峰さんに告白できたら教えてあげる」 「う……」 そういわれては返す言葉がない。 なんでこの時、由宇の年齢が気になったんだろう。 前、14才だと聞いていたのに、そんな風に思えなかった。 18才だと言われても信じなかったくせにね。 なんていうか、由宇の不思議な存在感に興味があったんだと思う。 告白したら研究所に来るのをやめるようにいわれた事も、拒絶されたみたいでショックだった。だからもっと親しくなりたいと思ったのかもしれない。 「うん、決めた!」 「ん? なにを?」 「わたし、次の配達の時、告白するっ」 由宇は目をぱちぱちとしばたく。 「急、だね」 「絶対に教えてね」 「年齢?」 「由宇の事!」 由宇は目を見開いた。
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