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季節は夏とはいえ、山の夜は寒い。
そして暗い。
研究所の門前にある監視カメラを避け、比較的光の届く木の近くに座り込んだ。
(やめときゃよかったかなぁ)
大きな虫を見たり、蛾が纏わり付くように飛んでくるたび、後悔する。
腕時計の針は午前3時。
朝日が昇るまではまだ時間があった。
お腹もすくし、失恋して自棄になっていたとはいえ無茶しすぎた気がする。
眠い。
でもこんなところで眠ると虫の住家になりかねないし……
携帯は電波なし。
勢いが続いたのもせいぜい2、3時間だった。
後悔からため息をもらす。
その時、研究所から離れた山の奥に、わずかな光が見えた。
「ひぃぃぃ!!」
私は立ち上がり、研究所の門を両手で叩いた。
横にインターホンがあるのだが、気づかないぐらいパニックに陥っていた。
やばいやばいやばい。
山の中の光だなんて、頭に『ゆ』がついて、最後に『い』がつくものしか思いつかない。
私がこの世で一番苦手な幽……
混乱して泣き叫ぶ私の肩に、重みがかかる。
なにかの手がのったような感覚。
「!!!!」
声なんて出なかった。
喉が壊れたんじゃないかってぐらい、叫ぼうとしても悲鳴が出ない。
無意識に耳を押さえて、口を大きく開いていた。
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