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「あの…!その…、あなた、さっきので死にませんでしたか?」
かなり不躾で、奇妙な問いだとわかりながらも彼女は聞いた。
そんな問いに、彼はすこしだけ考え込んだ。僅かに視線を逸らせて、再び彼女を見つめる。
そして、首を縦に振った。
やっぱり…、と彼女は脱力する。
その瞬間、彼が一歩前に出た。
反射的に彼女はビクッと後ろに下がった。
それを見て、彼は止まる。
しかし、何か言いたげに口元と眉を動かしたが、彼女の眼には入らず、彼は沈黙するしかなかった。
「………?」
彼の行動に彼女は疑問を抱きながらも、導き出された解答に愕然とした。
だからか、思わず呟く。
「まさか…、ここが死後の世界ですか」
「その通り」
意図しなかった返答に彼女は驚く。
その声は女性のものだった。故に彼ではないと、直感的に彼女は思った。
声の聞こえた方向を向く。既に男性も向いており、さきほどとは比べる事が愚かしいほどに眼光は鋭くなっている。
向けられてもいない視線に、彼女は恐怖した。
「まぁまぁ、そう睨むな。呼ばれずとも、招かれずとも、ワシは現れる」
すん。
そんな擬音語が適切なように風が通り抜ける。
瞬時に暗闇は、金色に鈍く輝く宮殿へと変容した。
その強烈な光景に、二人は二人共、息を呑む。
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