死は転がるようにやってくる

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「は…、ぁぁぁ……」 途端に安堵し、息が漏れる。 腰が抜けなかったのが奇蹟的に思えた。 ごとん、と掴んでいたブロックを地面に落とし、襲われていたかつての同級生を見る。 丁度、倒れた男からナイフを回収してる所だった。 その行動にふと彼女は首を傾げるが、気付く。 (あぁ、意識を取り戻すかもしれないもんね。冷静だなぁ、徳川君) と納得した。 そう思えるほどには彼女も冷静さが戻ってきているようだった。 彼女は深呼吸をする。 肩から力が抜けていく感覚が彼女を満たした。 不意にナイフを持った同級生と眼が合った。自然と彼女は笑顔を浮かべる。 「あはは…、大丈──」 彼女の言葉は続かなかった。 「ぶッ…、は……っ、は?」 言葉の代わりに息だけが口から零れ出した。 男を挟んで向かい合っていた同級生との距離は既になくなっていることに気付いた。 今は、彼女に密着し、その身体を小刻みに震わせている。 やがて…、二人の身体は離れていった。 後退りする同級生を不思議に見つめながら、彼女は腰を落とす。 とても立ってなどいられなかった。 「は…、あ…、へ…」 彼女は呻きながら、自身の胸に触れる。調べるように、或いは現実を確かめるように。 一度離して、眼の前に持っていく。 濡れていた。赤い。赤い液体。 彼女には見覚えがあるものだった。 いつかの昔。どこかの暗転する場景の中で、彼女はそれを見た記憶が脳裏に映り込む。 その記憶と同じ薄闇が支配する世界で、再び彼女はそれを目にした。 (……血だ) 極めて冷静に彼女は思った。 (胸から血が出てる。あたしの血だ。あたしの血だよ。…なんで?) 自分がこうなっている原因を探した。 まずは脳内を探して、次に心中を探して、最後に体中を探した。見つからなかった。 なので、今度は外へと目を向けた。外部へと答えを求めた。意外とあっさり見つかって、彼女は拍子抜けをしてしまった。 (あー) 心中で唸る。 眼の前に血の滴るナイフを握る同級生を見ていた。 彼女は刺されたことに、ようやく気付いた。
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