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「やあ、今市」
「あのさ、名前で呼んでくれないか?」
その名字好きじゃないんだ、そう言うと、三河は少し笑った。
「そうだね、紘佑」
……まただ。また、あのわけのわからない感情。
いますぐにでも、三河の細い手首を掴んで、押し倒して、そのあとは――。
わからない。俺は三河をどうしたい?
「……なあ、三河」
「ん? なに」
「俺さ、最近変なんだ」
「それはいつものことだろ」
三河はさらさらの茶髪を揺らして首を傾げる。
いまなんか失礼なこと言わなかったか。
「ちがくて、ほんとに困ってるんだ」
「へえ」
三河にこの衝動や気持ちについて説明する気はない。けれど、本当に困ってることだけは知っていてほしかった。
いつか制御しきれないほど感情が大きくなって、三河をどうかしてしまったとき、俺にもなにがなんだかわからないとわかってもらうために。
「それは大変だね」
同情の欠片もなく形だけの言葉を口にする三河。わかってたよ、こいつはこんなやつだ。
こんなやつだから、どんなことがあっても友達でいてほしいし、なにがあっても受け入れてくれる気がする。
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