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そして、運命の日はやってきた。
きっかけはほんのささいな、日常に組み込まれていたはずの出来事。三河が女子に告白されていた、だけ。
――それなのに、俺の頭の中は真っ白になって、それでも体はあくまで本能に忠実に動いて、三河の腕を掴んでいた。
そして気が付いたら、屋上へ続く階段にいて、三河の細い首に手をかけていた。
三河の首はいまにも俺の手の中で折れてしまいそうに儚い。まるで小動物を手の中におさめている気分だ。
力を入れたら、いとも簡単に尽きる命。
三河はたいした抵抗もしないで、ただ苦しそうな表情を浮かべていた。
きっと誰も見たことがない、俺だけが知るこの表情。
俺はそれに満足して、手の力を抜いた。
「っ……、……」
三河は浅い呼吸を繰り返している。そして涙の浮かんだ瞳で俺を見た。
目尻にとどまっていた涙が、頬をゆっくりと伝う。
その瞬間、俺の中でなにかが切れた。
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