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「君は本当に名字と名前が不似合いだな」
「マコト毎回言うよねそれ。ちょっと傷付くんだぜ」
しかし彼は不思議なもので、後輩に花里先輩と呼ばれている時も同級生にリュウイチ君やタツと呼ばれている時も何故かしっくりくる。変幻自在な、スライムのようなものなのだろうか。
「君はスライムみたいだな」
「それ褒めてんの? けなしてんの?」
「僕が知るか」
散歩コースは決まっていない。しばらくぶらぶらしたら帰ろうと思っていたら、急に花里が立ち止まった。
「どうか」
「海行こう! 海!」
僕のどうかしたのか、という言葉を遮ってまで言う必要があったのか三分ぐらい問いただしたかったが止めた。所詮三分程度のものだ。
「いいよ、行こうか」
花里は僕の返事に驚いたようだったが、僕が駅の方に歩き出すと小走りでついてきた。
親鳥の気分ってこんなものだろうか。
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