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電車をいくつか乗り継いで、一時間と少ししたくらいに僕らは海を見つけた。
電車に乗っている間花里は暇だ暇だと騒いでいた。僕はその頃北欧神話について考えていたから暇とは思わなかったが。
「海って青いよなぁ……」
海に着いて花里が発した第一声がそれだ。他にないのか。もっと喜べよ。
「君なら走り回ると思ってた」
「いや、俺もそのつもりだったんだけど」
あんまりにも海が海だから、とわけのわからないことを花里が言った。
「入っていいかな」
「……え?」
丁度冬の大三角形について考えていたので花里の言った言葉を言葉として認識できなかった。
花里は僕の返事も聞かず靴と靴下を脱ぐ。ジーンズの裾も少し捲り花里は海へ入っていった。
「うわ、つめたっ」
冷たいと騒ぎながらも着実に足を進める花里。それじゃあまるで、入水自殺のようじゃないか?
膝まで捲っていたはずのジーンズが濡れている。彼はもう太股の辺りまで水に浸していた。
「死ぬのか、君」
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