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腕から血を流しながら言った彼の言葉が、あまりにも不似合いで、気が抜けてしまった。
てかなんでカッターなんか持ち歩いてんの?
「どうぞ?」
差し出された白い腕。その上をすべる透き通った赤。
それはまるで最高級のものに見えて、口付けるように血を舐めた。
途端口の中に広がる血の味。ねっとりと舌に絡みつくような感覚だ。
「……ん、おいし」
それにしても、なんだか変な気分になってくるな。他人の血って。
自分のものとたいして変わらないはずなのに、美味しいと思う。
流れる血を丁寧に丁寧に舐めとっていたら、真新しい傷に辿りついた。
「っい、」
傷をおおう血をぺろりと舐める。流石に痛かったのか彼は声をあげた。
それ以前に気持ち悪くないのかな。男に腕をべろべろ舐められるなんて。
……我に返りかけて、思いとどまる。今は血を堪能しよっと。
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