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すっかり綺麗になった白い腕に鮮やかな一筋の赤。
傷を開かせるように皮膚を左右に引っ張ると、一瞬見えたピンク色を隠すみたいにじわりと血が滲んだ。
なんか、やっぱり、綺麗だ。それで、美味しそうだと思う。
もちろん食人的な意味ではなく。
「お気に召したようですね?」
彼の言い方に苛立ちを覚えたけど黙ってうなずく。だってお気に召したのは本当だし。
少し黙らせたくて、傷口を噛みつくように吸った。ああ、また血の味。
口の中が血の味でいっぱいだ。嫌な感じはしないけど、それでいて口をすすぎたくなる。
最後に口を離すとわざとじゃないのにちゅ、と濡れた音がした。なんとなく照れる。
「……あ、ごめん」
「いや、役に立ったならいいですよ」
「変な敬語やめてよ」
「先輩には敬語でしょう?」
そうだけど、と言って下を向く。敬語を使われるのが嫌なわけじゃない、けど。
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