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「雪端?」
現実なのか夢なのかわからないどこまでも曖昧だった感覚が名前を呼ばれ一気に冴える。窓の外を見るとほの明るい。
「……いま、何時」
「四時ちょい前」
「ずいぶん早起きだね」
ぼんやりしていた頭が覚醒しだして、深夜に起きてずっとソファーに座っていたことを思い出した。
七日といつも通りの会話を交わし、日常が急速に近付いてくる。
いや、感覚が日常に戻されたんだ。
「それならそっちこそ」
「うん。そうだね」
ああ、いつも通り、普通の会話。日常。
少し違うのは俺が深夜に起きたのと、七日が早起きしたくらい。
あとは全部、一緒。
繰り返すことに意味はあるのか。
「……疲れた……」
唇をほとんど動かさずに呟く。疲れた、いつも通りの毎日が。平凡で平和な日常が。
俺はゆっくり立ち上がって、棚のひきだしを探っていた。
、あった。
銀色の刃を手首にあてる。冷たい。
ハサミを持つ右手に力を入れる。しっかり刃を手首に押し付けて、ゆっくりと横に引いてみた。
「、っ……」
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