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震えだしたおれに気づいて、水無月はいぶかしげに眉を寄せる。
怖い。怖い。怖い。この恐怖から解放されるなら、いっそ、死んで、
「ごめん、ごめんね……ごめんなさいっ……」
謝って許されることだろうか。いや、きっと一生許される日はこない。だっておれは、それだけのことをしたんだ。
「……なぁ、一ノ瀬」
水無月の声に顔を上げる、彼の顔は無表情という言葉が一番お似合いなくらい感情が読み取れなかった。
水無月は罪の意識とかないんだろうか。怖い、とか、思わないのか。
「好きだよ、だから大丈夫」
おれより身長は低いはずなのに、水無月はおれを包み込むように抱きしめた。その少し低い体温に、安心して、不安になって。
あっためてあげたいと思う。おれの体温なんて全部あげるから。だけど怖いのは薄れていった。
「おれは、水無月が、好きだよ」
“は”って言ったのはわざとだ。水無月の言葉は信用できない。それでも今はその言葉にすがるしかなくて、それが情けないけどおれにはそれ以外の道がない。
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