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「痛い」
「我慢しろ」
ぎりぎり絆創膏で足りそうな傷なのに、七日はガーゼと包帯を取り出した。
「訊かないの」
「言いたいのか」
「……どう、だろう」
ガーゼを傷口に軽く乗せ、上から包帯を巻いていく。
あまり外に出ないせいで白い指が、包帯とよく似合っていた。
しかし、包帯を巻く手付きが妙に慣れている。
「したことあんの」
「なにを」
「包帯巻くの」
「……母親が、よく怪我するから」
そうか。納得するのと同時に、目の前が急にぼやけた。
鼻がじんと痛い。渇いたせいか、目も痛かった。
「俺、死ぬのかな」
震えた涙声が出る。返事はなかった。予想より小さい小さい声だったけど、ちゃんと届いてると思ったのに。
七日なら、ちゃんと返事してくれると思ったのに。
「……俺、死にたかったわけじゃない」
「うん」
「死にたくない」
「うん」
七日の打つ軽い相槌。無意識でしょう、それ。
いま返事をもらえなかったら俺が死ぬって、無意識に分かってるからでしょ。
七日は端を小さな金具で留めて、手のひらをぽんと触れるように叩いた。
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