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バルドシャン帝国のはずれ、辺境の地ダルサエラに、ある青年剣士が訪れたのは、そろそろ秋に差し掛かろうかという残暑の厳しい日だった。
男にしては整いすぎた顔。
腰までかかる長い黒髪を、簡単に革紐で括っている。
全身を黒衣で覆い、腰に差した二本の剣は、うち一つは地につくほどの長剣、もう片方は古びた装飾刀である。
どこか特徴的で、黒の色と共に印象に残る容姿だ。
防具はプレートアーマーのみという軽装備、身軽に動ける分、攻撃を受けたときのダメージは大きい。
だが全身鎧で固めるような戦い方は男は得意ではなかったし、易々と攻撃を受ける気もなかった。
剣の腕はそれなりに鳴らしたつもりでいる。
男はギルド経由で運搬の仕事を請け負っており、中継地点としてこの町で一晩宿をとることにしていた。
日が落ちきる前に町の門をくぐり、いくつか買い物を済ませると、その足で宿へ向かった。
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