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宿に到着して、記帳を済まし、部屋に案内されると青年は荷物を下ろした。
次いで武器防具などの装備品を外すと、長剣を鞘から抜いた。
ところどころが刃こぼれしており、血糊と脂で曇ってしまっている。
「あーぁ、やっぱ駄目んなってんな…」
小さくぼやいて、ため息を一つこぼし、皮袋から砥石を取り出した。
曇った刀身を丹念に研いでいく。
ダルサエラに着くまでにも、何度か魔物と出くわした。
叩き斬る分には問題ないが、切れ味が鈍っていることは確かだった。
鍛冶屋に頼めばいいようなものだが、駆け出しの頃からの長年の習慣とかいうやつで、未だに自分でしてしまう。
ひととおり長剣を研ぎ終わると、青年は夕食をとりに階段を下りた。
小さい町では宿屋、兼、酒場になっている店は少なくない。
この宿も案の定で、仕事を終えた町人たちが酒を酌み交わしては騒いでいる。
喧騒の中、青年はカウンターに立つ宿屋の女将に幾品か料理を注文して金を渡した。
陽気に歌う人々を眺めながら、少し遅めの夕食をとる。
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